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かい人21面相、文庫本で久々に、、、

「グリコ・森永事件―朝日新聞大阪社会部」という本が最近文庫化されました。まあ、文庫は安いということもありまして、えらく旬を過ぎた本、買ってしまいました。

まあしかしこれ、面白いですねえ。なんていうと、当事者には失礼というか、不謹慎な発言でしょうけど、コレ、下手なミステリーより、よほど面白い。

実はこの事件、一つだけ引っかかる点がありまして、ちょっと公開を憚られるのですけど、まあ、もう大昔の話ですから、書いてしまっても問題はないと、勝手に判断いたしましょう。

この事件が深刻化していた頃、私は、全然別の話題に興味を惹かれてました。それは、電話機に取り付けるだけで、相手の嘘が判るという機械。人間、嘘をつくと、緊張感から声のトーンが高くなったり、言い淀む、これを電子回路が検出して、「嘘発見!!」と警告のサインを点灯させるのですね。

で、大阪府警の偉いヒトが、グリコ事件の捜査に国民の協力を呼びかける。そんな話をテレビ中継で聞いていたときのことです。一瞬、あれ、っと思ったのでした。

このお偉いさん、事件の経過を説明していたのですね。かい人21面相、こんなたくさん悪事を働いている、とアピールしてたわけですけど、アベック襲撃事件のところで、声のトーンがわずかに上がり、言い淀んだんですね。ちょうど、「アベックの男性の方に、、、ひどい怪我を負わせ」なんて形かな? 文字にすれば。

電話に取り付ける嘘発見器、おそらくここで、嘘発見サインを点灯させそうだね、なんてのが、最初に感じたことなんですけど、いろいろ考えているうちに、これ、本当に嘘かもしれない、という確信に近いような気持ちを持つようになったのですね。

アベックを襲撃した21面相は、女性を人質に取り、男性に金を取りに行かせます。その金、グリコを脅して出させたもので、3億円のキャッシュです。公表されたところでは、21面相がアベックを襲ったとき、男性に怪我を負わせたと。

しかし、これから金を取りに行かそうと考えているのに、そうそうひどい怪我をさせるわけにはいかない筈。最もありそうなことは、男性を21面相の仲間と早とちりした警察官が逮捕するさいに、男性をぼこぼこにしてしまった、という成り行きなんですねえ。

これに先立つかなりの期間、警察は21面相に、とことん、おちょくられておりまして、警察官達、怒り心頭に発していても、全く不思議はありません。脅迫に従って持参した金を取りに来た男性、犯人とみなされるのが当然の成り行き、事実、男性が21面相と無関係であることがわかったのは、逮捕劇からしばらくしてのこと、逮捕のさいの混乱を、天の与えた好機とばかりに、警官達、鬱憤晴らしをしても不思議はない。

まあ、だからどうした、と言われれば、それまでなのですけどね。こんなこと、事実だろうと事実じゃなかろうと、いまさらどうでも良い話、かもしれない。仮にアベックの男性が警官に痛めつけられたのだとしても、この男性、納得の行く扱いを受けているはず。だって、ばらされちゃ困りますからね。警官たちにも、ちょっと乱暴だとは思うけど、その気持ちもわからなくはない。

でもこれ、近くにいたマスコミ関係者も気づいていたはず。その当時であれば、事実を明かすことは21面相の捜査に支障があったかもしれないけど、もう、そんなことはない。いつか、事実が明かされても良い、と思いますよ。そもそも。もしこの話が本当だとすると、21面相に科せられた数々の罪状のうち、アベック襲撃事件の傷害罪、これは冤罪だということになります。コレはまずい。

警官が乱暴なのもちょっと困るし、この真相解明、やはり必要ではないかな、なんてことを、文庫化された事件の記録を読みながら、改めて感じたのでした。