明るさを増す空の下、周囲の山間に烟る霧雨が雲のように見えます。
昨夜からかなりの雨が降ったとかで、内宮参道の玉砂利も、うっそうと茂る木々の葉も、埃を流して瑞々しい。二十分もそうして歩いて正宮を拝むと、一陣の風が眼前の布を吹き上げ、本殿がちらりと見えるのもあり難い。いかにも良い事がありそうな、伊勢参りでした。
伊勢神宮といえば、日本の神社の頂点に位置する、カトリックの、サンピエトロ寺院に相当します。サンピエトロ寺院は、聖パウロの墓の上に建てられ、ローマ法王がいます。伊勢神宮は、天照皇大宮(あまてらすおおみかみ)を祭り、神道の頂点には、古くは、天皇家が位置していました。双方よく似た形式ではあるのですが、天照皇大宮は神話に出て来る神であり、神道と天皇家の繋がりも、あまり強調されてはおらず、神道は、どちらかといえば、自然(=神)と向かい合うという印象を与えます。
カトリックが私達に向かい合うのは、人、人、人、聖人、法王、司祭たちですね。そういえば、社殿も、カトリックが人工美を追求するのに対し、神道は、樹や山、森や川など、自然を全面に出して、自然との調和を追及しているんですね。
伊勢神宮は、最近では交通機関が発達して、首都圏からも簡単に行けます。新横浜から名古屋は、のぞみで 1.5時間、名古屋から伊勢山田まで、近鉄特急で 1.5時間、タクシーで、外宮、猿田彦神社、内宮と回り、帰りは、五十鈴川からの近鉄特急と、名古屋からのぞみの、計3時間です。
その間、参拝が終わったところで、おかげ横丁に寄って、食事とみやげ物購入、これにかなりの情熱を注ぐんですねえ。豚捨の牛肉料理、赤福にういろう、帰りの荷物は相当に重い。
伊勢参りは江戸時代も盛んだったんですけど、当時の人は、実のところ、遊郭が目当てだったようです。伊勢参り大神宮へもちょっと寄り(古川柳)、今も昔も、似たようなことをやってますねえ。