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番号持ち運び制で揺れる携帯公式サイト

先週のこのブログに、「客の錯誤で稼ぐ99のビジネスモデル」と題して書いたことと似た話が、先日(3/29)の日経朝刊の囲み記事にありました。まあ、これは非難する論調というよりは、この手のビジネスが、携帯サイトの世界では番号持ち運び制により、少々困ったことになりました、という、どちらかといえばサイト寄りの記事なのですね。

で、まずは記事の概要をご紹介しましょう。

・携帯電話会社が認定する公式サイトは、月額300円程度の会費を通話料と同時に徴収するものが多いが、近年、広告収入で運営する非公式サイトが増加、利用者が非公式サイトに流れ始めた。

・これ以上に破壊力を持つといわれているのが、11月に始まる番号持ち運び制で、公式サイトの場合、更新手続きをしないと、電話会社を変えると契約が終了する。

・相当数いるといわれる非稼動会員(「300円ならいいか」といった感覚で、利用しなくなった後も会費を払い続ける会員)は契約更新する確率は低く、会費以外の収益確保が急務だ。

と、いうことで、種々の新サービスに乗り出している、というのですが、これは、ビジネスとして、まともな姿なのでしょうか。

まず第一に、会費だけ払い続けてサービスを利用しない「非稼動会員」の会費の上に、公式携帯サイトの経営が成り立っている、という様子なのですね。これがまず異常な姿であると、私は思いますし、このような形で成り立っている事業、収益の改善を目指すと、非倫理的行為に陥りやすい、と思うのですね。

まあ、一部は先週書いたことですが、加入は容易で、契約の打ち切りは難しくする、というような手段も種々考えられますし、最初は魅力的なコンテンツを提供して、徐々に品質を落とすことで、非稼動会員化を目指す、なんてやり方も成り立つでしょう。で、次々に新しい公式サイトを立ち上げれば、新規会員も継続的に入ってくるし、うまくすると、同じ人が2つも3つものサイトの会員になってくれるかもしれません。

まあ、こういったことは、意図的に、非稼動会員の増加を狙っていなくても、起こりえる現象です。と言いますのは、まず、新規加入受付電話を繋がり易くすることは、営業上必須のことですし、コストを考えれば、他の電話窓口の数を絞ることも、経営的には当然の行為でしょう。

まあ、デパートなどでも、一階入り口付近のエスカレータは2階へ行く登りと、地下へ降りる下りが並んでおりまして、地下から二階へ行くには不便なのですが、これも、お客をとにかく店内に入れてしまえ、というデパートの営業戦術上、当然のやり方であるとも言えるのですね。

第二に、サイトの運営に伴って、コンテンツが徐々に陳腐化し、魅力がなくなることも当然起こり得ることです。サイトの立ち上げには、多くのスタッフが知恵を絞りますが、サイトの運営が安定すれば、スタッフも減るでしょうし、提供できるコンテンツも徐々に底を尽いてくるはず。ユーザ側は、サービスを使い続けるに従って、より新しい、より高度なコンテンツを求めるはずですから、ある時点では、乖離が生じることも、当然である、といえます。

更に、新しいサービスを考え付いたら、これは、新たなるサイトとして別途会員を募るということも、至極当然の行為であるのですね。

ところが、その結果生じることは非稼動会員の増加でして、結果的に、非稼動会員の支払う会費の上にサイト運営事業が成り立っていたのだとしたらこれは大いに問題なのですね。

何しろ、サイト側は、そういう状況を知った上で、この手の公式サイトビジネスを展開している。つまり、上に書きましたような、非稼動会員を生み出す要因をそのままにしておくことは、この事業、最初からそれが狙いだったのではないか、との疑いを抱かせるに充分であるわけです
ね。

通話料と同時に会費を徴収する「公式サイト」は、会費徴収手数料などの形で、おそらく携帯電話会社の利益にも結びついているのでしょう。でも、儲かれば良い、との姿勢は携帯電話会社の側にも少々問題があるように思います。少なくとも「公式サイト」を標榜し、会費徴収に手を貸す以上、そこで行われていることについても、監視を怠らず、トータルとしてのサービス品質の向上に努めなくてはならないのではないか、と思うのですね。

まあしかし、番号持ち運び制は、さしあたり、悪貨を一掃する良い機会ですし、ソフトバンクの携帯参入は、これまで利用者の囲い込みを目指していた携帯各社とは一線を画す経営戦略の様子でして、まずは世の中、良い方向に向かいつつある、と思っております。孫さんには、この乱れ切った業界を、多少なりとも、まともにしてくれること、切に期待いたします。