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北朝鮮核兵器の謎

北朝鮮の核実験なるものに疑問の声も出ているようです。確かに、TNT火薬100トン分程度の爆発力では、核爆発にしては少々小規模に過ぎると、私も感じておりました。

で、これに対します私の見解は、実験失敗というもの。以下、この見解につき、少々解説を加えておきましょう。

まず、核爆弾のタイプですが、北朝鮮が原子炉からのプルトニウムを分離していること、ミサイル搭載を目指していることなどから、長崎型の爆縮タイプのプルトニウム爆弾であることに、ほぼ間違いないでしょう。

爆縮型プルトニウム爆弾といいますのは、中空のプルトニウムの球を、周囲で爆薬を炸裂することにより中心に集め、瞬時に臨界を超えて核分裂を起こす、というものです。

この技術的困難さは、核分裂が開始するとプルトニウム自体を外部に吹き飛ばしてしまう、という点でして、これが最小となるよう、球を均等かつ素早く爆縮させなくてはいけません。

周囲の爆薬は、正二十面体等の正多面体の頂点に配置された起爆装置(雷管)で同時に点火するのですが、それでも衝撃波は雷管を中心に球状に広がります。これをプルトニウムの球面にあわせるために、爆発速度の異なる火薬を利用した、一種のレンズを火薬内に設けます。

このあたりの設計は、かなり微妙なもので、実験で確認する必要があります。たとえば、爆発速度の測定は、高速なオシロスコープで測りまして、これに利用できる100MHz以上の信号が測れるオシロスコープは、以前はココムの禁制品でした。また、レンズの設計や、爆縮過程のシミュレーションにはコンピュータが必要なのですね。

しかし、今日では、100MHzくらいの信号は誰でも測定ができまして、パソコンも世界中にあります。実をいいますと、プルトニウムの爆縮は、半世紀以上も前に完成しているローテクでして、北朝鮮といえども実現にさほどの無理はないのですね。というわけで、北朝鮮は爆縮実験を繰り返して、自信を持って今回の実験に臨んだのでしょう。

しかし、銅か何かの玉を爆縮するのと、プルトニウムを爆縮するのでは、相当に違うのですね。何よりもプルトニウムは核分裂を起こし、巨大な熱を発生します。均一さの他に、充分な速さが必要なのですね。

まあ、おそらくそこら辺が、今回の北朝鮮で起こったことではないか、と推定しております。もちろん核分裂の発生も、ゼロではないでしょうが、貴重なプルトニウムのごく一部を燃やしただけでは、核爆発に成功したとはいえません。なにぶん、核分裂それ自体は、ステンレスのバケツを使っても簡単に起こせること、わが国も東海村で経験したことなのですね。

ではこの先どうなるでしょうか。北朝鮮が立て続けに核実験をやるのでは、という観測もあるのですが、普通は、実験に失敗したらその原因を探り、多くの場合は設計変更を余儀なくされるでしょう。このような段取りを踏む場合、次の実験までには、まず、数ヶ月はかかるのでは、と思いますよ。

ちなみに、わが国が核開発をするとしたら、所要期間はどのくらいでしょうか。爆縮に関しては、火薬を使う技術に長けた人達がわが国にもおります。たとえば、旭化成などがこの手の技術を得意としているのですね。まあ、延岡あたりを震源とする異常な振動が検出されたら、気をつけたほうが良い、ということですね。

で、数ヶ月もあれば(急がせれば3月ほどで)、プルトニウム爆弾の1ダースくらいはできるはずですし、人工衛星の打ち上げもできるわけですから、これを北朝鮮に打ち込むこともさほど難しくはない。

日本がこれをしないのは、日本人に良識があるから、でして、まずこの良識が、いつまでも保たれることを願わずにはおられないのですね。まあ、早い話、日本人がキレるようなことをしてくれるな、と北朝鮮にはお願いしたいわけです。