昨日のブログの続きです。昨日の終わりの部分から始めましょう。って、なんかCMがはいったドラマみたいですね。
キョンの語り:駅前でタクシーを降りると佐々木はこう言った
佐々木:ちょっと付き合ってくれないか。いろいろと話したいことがあるんだ
キョン:もちろん構わないとも(と、いうか、俺たちがここに来たのはそれが目的だったんじゃないか)
キョンの語り:公園脇の並木道。いつぞやの不思議探しのとき、朝比奈さんが未来人であるという告白を聞いたのもここだったなあ、などとどうでも良いようなことを考えながら俺は佐々木さんと歩いていた。佐々木さんは、ショックを受けた様子で、元気がない。そりゃあそうだろう。俺にはとっくに免疫ができてしまったが、いや、そういう俺にしたところで、いまだに動悸が止まらないのだが、佐々木さんにはこれが初めてだ。この世の本当の危険に気づいたとき、そう、俺を殺そうと、朝倉涼子にナイフを振り回された直後の俺、それが今の佐々木さんなのだからなあ。しばらく歩いた後で、佐々木さんが口を開いた
佐々木:あの車、少年をさらった車には、あの藤原と名乗っていた未来人が乗っていた
キョンの語り:「そうか」そりゃあそうでしょうとも。あいつがやらないで誰がやる。そういえば、ハルヒが勉強を教えているあの少年は、タイムマシンを発明することになる、というようなことを朝比奈さんが言ってたな。未来人藤原の狙いが、過去を改変して、タイムマシンのない世界を作り出すことだとしたら、あの少年こそ、真っ先に狙われるはずだったじゃないか。古泉の機関も、俺の妹や朝比奈さんを護衛する前に、まず守らなければいけないのはあの少年だったということに、考えが至らなかったのだろうか。ま、しかし、結果的に古泉の機関は良い仕事をしたわけで、こいつは誉めてやらねばならないだろう。
佐々木:そして、最後に犯人達が忽然と消えたとき、僕にはわかったんだ。こいつらは本物だと。藤原と名乗る未来人は、おそらくタイムマシンを使ったのだろう
キョンの語り:「奇術という可能性はないのか」と俺は思ってもいないことを口にしながら、この話をどうもっていけば良いのか、ということについて頭を必至にめぐらせていた。
佐々木:僕はあれに類するマジックをみたことはある。しかし、あの状況でそれは無理だ。地面は普通のアスファルト舗装で、マンホールに類するものはなかった。あと仕掛けるとすれば車だが、これは警察に押収されるはずで、内部に隠れているという手はとりえない
キョンの語り:ない知恵を絞ってみたところで、ろくな知恵がでてくるわけもない。俺は単刀直入に切り出すこととした
キョン:なあ佐々木、君は、あんな連中とは付き合わない方がよいんじゃないか。こいつは、「面白い」なんていえるレベルを超えているように俺には思われるんだがな
佐々木:君は、彼らと面識があるようなことを言っていたな。今回のようなことを、過去にもしてたということか?
キョン:そうだ。誘拐未遂をやっている。そのときは、あの橘京子と名乗る女も仲間だった。もちろん、藤原もな。今回さらわれた少年は、前にも一度殺されかけたこともある。俺は、それも連中の仕業ではないかと疑っている
佐々木:確かに君の助言はもっともだった。興味深い話ではあるが、これ以上続けると学業にも差し障りそうだ
キョン:学業どころか、警察沙汰だからなあ
佐々木:しかしどうする。この件では、僕たちは犯人を知っている。少なくとも藤原と名乗る男が犯人だとね。しかし、これを警察に話すか? 犯人は未来人で、タイムマシンで逃げちゃいました、と警察に真相を告げるべきだろうか?
キョン:まあ、信じちゃくれんだろうな。下手をすれば狂人扱いだ
キョンの語り:結局、警察にはハルヒが事情を話してくれて、俺たちはその内容を確認する以上のことは要求されなかった。被害者宅でハカセ少年の両親に、実際に活躍した古泉らを脇にはべらせて、ハルヒ自身が口角泡を飛ばして武勇伝を語っているところに刑事たちがやってきたのだから、当然の成り行きともいえるだろう。俺たちにとっては胃の痛くなるような事件だったが、ハルヒには、たなぼたのおいしい話であったに違いない。これで十分に満足したのか、翌日の日曜日も、不思議探しは開催されなかった。
アニメならここでエンディングとなるところですが、小説版はそういうわけにはいきません。β側のストーリーには、もう一つの重要なテーマが残っております。そう、あの天蓋領域、自称周防九曜と喜緑さんたちとの対決です。
このお話、キョンの語りという形で進める、というルールを課すといたしますと、キョンが宇宙人対決の場に居合わせる必要があります。この一つの形は、ミステリックサインのときと同様、喜緑さんがキョンたちを異空間に連れ込む、というパターンですが、同じパターンではつまりません。ここはもう一つのありそうな展開を採用することといたしましょう。
キョンの語り:土曜の翌日は日曜日だ。と、いうことは休日である。世界の高校生が惰眠をむさぼる休日に、俺は毎度のように、ハルヒに引きずりまわされている。でも、本日は不思議探しは休業。昨日の大捕り物でハルヒも満足したんだろう。ハルヒを退屈にさせちゃいけない、と古泉は言うが、ハルヒにイベントを提供してやるような気は、俺にはさらさらないんでな。などと考えながら、世間の高校生並みに惰眠をむさぼっているところに電話がかかってきた。誰だ。面倒な話にならなければよいが
古泉:お休み中のところ申し訳ありません。緊急事態が発生しました
キョン:こんどは何だ。何があったんだ?
古泉:涼宮さんの閉鎖空間に侵入者が現れました
キョン:何だって? おまえら以外、誰も入れないんじゃなかったのか?
古泉:それが入られてしまったんだから仕方ありません。しかも侵入が確認されたのは、敵性の存在、橘京子と周防九曜です。あなたはこれが、この世界にとってどれほど危険なことか、おわかりになりませんか?
キョン:なんと。それでハルヒは気づいているのか? やつらは何をしでかそうとしているんだ?
古泉:彼らがしようとしていることは、涼宮さんのエネルギーを佐々木さんに転送することではないか、と機関では考えています。どのようにすればそんなことができるのか、われわれにも理解できないのですが、これに類することを、いちど長門さんがされています。で、これを涼宮さんに気づかれた場合、世界はただではすまないだろう、というのが機関のお偉方の一致した意見です
キョン:そうだろうなあ。あいつの世界に踏み込んで勝手な真似をしようとしたことに気づかれたら、あいつは怒り狂うに違いない
古泉:最善の策は、涼宮さんに気づかれる前に、われわれの手で彼らを排除すること。一刻の猶予もなりません
キョンの語り:古泉の言葉に従って玄関を出ると、そこにはタクシーが停まっている。運転しているのは新川さん。助手席には喜緑さんが座っており、後部座席の古泉がドアを開けて手招きしている。タクシーに乗り込んだ俺に古泉が言う
古泉:今回はすぐ近くですから、ご安心ください
キョン:ぜんぜん安心できんぞ。しかし、俺を連れて行ったりして、かえって足手まといなんじゃないか?
古泉:いえいえ、まだ存在は確認されていないのですが、敵方にはもう一人、重要人物がいます。佐々木さんですよ。あなたには、彼女の相手をしていただきます。もし現れた場合、ですが
キョン:ははーん、古泉が橘京子を、喜緑さんが周防九曜を、そして俺が佐々木さんの相手をする、というわけか。あの藤原とか言ってたやつは、昨日の段階で消えてしまったから、朝比奈さんの出番はない、というわけだな
古泉:未来人の相手ぐらい、われわれの機関でも十分対応できます。もしあの未来人が現れたとしても、おそらく森さんには敵わないでしょう
キョン:そういえば、朝比奈さんも、戦闘力はゼロ、だからなあ
キョンの語り:コインパーキングに車を止めたわれわれは大通りに出た。
古泉:ここです
キョンの語り:古泉が指差したのは、以前と同じ横断歩道だ。古泉は俺の手をつなぎ、新川さんは喜緑さんの手をつなぎ、目を閉じて横断歩道の中央へと進む。一歩進んだ先は、以前と同様の、ハルヒの閉鎖空間だ。
古泉:まずは高地をおさえましょう。戦術上の定石です
キョンの語り:古泉はそういうと、われわれをとあるビルの屋上に導いた。そこから見えるのは、どこまでも広がる灰色の空間。信号機が無駄に点滅している以外には、動くものの存在はどこにもない。いや、誰かいるぞ
古泉:あれですね。周防九曜、長門さんの呼び名では天蓋領域です
キョンの語り:そいつは俺たちと同じように、数百メートル先のビルの屋上にいた。灰色の世界に墨汁を垂らしたようなそいつは、手を前に差し出すと、何か呪文を唱えているようだ。その直後、そいつの手が光ると同時に、離れたところの数軒のビルが、一瞬のうちに吹き飛んだ。
古泉:これはまずいですね。こんなことをしていると涼宮さんに気づかれてしまいます
喜緑:あれは私の担当
古泉:それでは僕は囮を務めましょう
キョンの語り:喜緑さんは、屋上の手すりに飛び乗ったかと思うと、そのまま、数十メートル先のビルの屋上に飛び移った。人間業ではない。古泉は、というと、例の赤い玉を出してその中に入ると、屋上から落下したようにもみえたが、じきに低空飛行で周防に近づく赤い玉が見える。周防は赤い玉と喜緑さんに向かって光の玉を連発。そのたびに、周囲のビルが次々と吹き飛ぶ。
キョンの語り:これではハルヒにばれないわけがない、と思っていると案の定、横に神人が現れる。あちゃー、ばれたではないか。あんなぽんぽんと射ち合っていてばれないわけがない。古泉も喜緑さんも、もう少し控えめにしてくれよなあ、などと考えていると、もう一つの緑色の玉が現れ、神人に向かい、糸のようなもので神人を縛り上げにかかるではないか。
キョンの語り:これは機関の援軍か、それにしても色が違うのはなぜだろう、やり方もいつもと違うしぃ、などと考えていると、新たに現れた赤い玉が四つ、緑色の玉に向かう。そうか、あれは橘京子だ。ハルヒを縛り上げて、エネルギーを転送しようとしているのだな。そして、赤い玉が古泉の機関の人間で、ハルヒを縛っている糸を切っている、というわけだ。
う~ん、よいところまできたのですが、文字数の縛りに到達してしまいました。続きはまたこんど、ということにいたします。
この考察は、最終的に『「涼宮ハルヒの驚愕」を推理する』なる文書にまとめました。