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『涼宮ハルヒの驚愕』を推理する:解説

「涼宮ハルヒの驚愕」を推理する、という文書をHPの「オリジナル文書」に置き、その後ひまをみて、文章の内容に手を入れておりました。

この文書は、「涼宮ハルヒの分裂」を「失われた驚愕/事件偏」に見立てまして、「愚者のエンドロール」ばりに、失われた解決偏を推理するという趣向の作品で、「失われた驚愕/解決偏」ともいうべきものです。

で、推理小説大団円におきます、名探偵による犯人の指摘に対応するのが、失われた「涼宮ハルヒの驚愕」の内容でして、その後、名探偵による解説がなされるのが普通です。

まあ、今回もそのようにしようと、最初は考えていたのですが、実際に書いてみると、解説するだけ野暮、などという気もいたしまして、解説はブログで、などと書いてしまいました。

もちろん、これまでのこのブログでも、解説に相当するものを書いてきてはいるのですが、ここで、もう少しきちんとした解説をしたほうが良いと考え、多少の解説を加えることにいたします。

まず、β側のストーリーは、京子らの敵対組織が、佐々木をハルヒに代わる存在とすることが明かされており、すでに長門が周防により病に伏す、という状況からスタートしておりますので、こちら側のストーリーは、体力勝負のガチバトル、という展開と考えられます。

β側のオープニングは、長門のマンションの一室であり、喫茶店での周防らとの邂逅から、「驚愕」には喜緑の登場が予定されております。同じヒューマノイドインターフェースの朝倉が長門と同じマンションに住んでいたことから、喜緑も同じマンションに住んでいるであろう、と類推されます。

ならば、「消失」で力を失った長門におでんを差し入れた朝倉同様、喜緑が長門の部屋を訪れることもありそうな話であり、ここでSOS団の面々と喜緑が顔を合わせるのも自然な展開です。

こうなれば、作戦会議へと話が進むこともまた必然であり、邪魔なハルヒを外すために、ミステリックサイン同様の、「玄関前に再集合」というパターンも予想される展開、ということになります。

ここで、周防の力を一つ封じておかなければいけません。長門を倒すような強力な力は、以後使えないようにしないと、周防は何でもやり放題、ということになります。ここは、喜緑の申請により、統合情報思念体が周防の力をブロックする、という以外に、良さそうな方法が思いつきません。

さて、ガチバトルで一つ思い出されるのが、朝比奈みちる誘拐事件なのですが、これが何故に行われたか、という犯行の目的に関しては少々不明確です。しかし、藤原らの目的が、佐々木を巻き込むことにあるとすれば、朝比奈を人質に取ることで、キョンに佐々木の説得を強制する、という理由がありえます。

今回、同様な危険があることは古泉らも予想するはずで、朝比奈およびキョンの妹を安全な場所に避難させる、というのは当然の作戦です。主要戦力を使わずにこれを実現するため、機関と関係のある鶴屋の助力を頼むのも、またありそうな展開です。

一方、「分裂」に言及のあった、ハルヒが勉強を教えている少年は、タイムマシンの発明に欠かせない人物であり、すでに一度、みちる誘拐に使用されたと同じ、モスグリーンのワンボックスカーにひき殺されそうになったことがあります。これが藤原らの仕業であった疑いはきわめて高く、藤原が再び同様の行為に及ぶ可能性は高いものと思われます。

もちろん、古泉の機関は藤原を監視しているはずであり、この事件はみちる誘拐事件と同様、無事に解決されるはずです。少なくとも、少年が殺されたりしたら、しゃれにはなりません。また、ここで藤原が凶悪な事件を起こし、これを佐々木が知ることは、京子らの企みをつぶす良い機会となるはずです。

この事件に、ハルヒは絡んでも良いし、絡まなくても良いのですが、題名に「驚愕」とある以上、絡ませて驚愕させることが自然ではないかと思います。この場合、キョン、佐々木、ハルヒが一堂に会することになり、面白いストーリー展開が期待できるのですね。

京子がなすべきもう一つの課題は、ハルヒの力を奪い取り佐々木に与えることであり、これができそうなのが周防です。これが周防にできることは、「消失」において、長門がハルヒの力を世界改造に利用していることからも推察されます。

で、それをどこで実行し、ガチバトルとしての見せ場を作るか、といえば、これは秩父の石切り場、じゃなくて、ハルヒの閉鎖空間がベストではないか、と思うのですね。なにぶん、その場所にはハルヒがいる必要があり、かつ、ハルヒには気づかれてはいけないわけですから、その必然性は多分にあります。

また、佐々木の閉鎖空間に入れる京子と、予想できない力をもつ周防を組み合わせれば、ハルヒの閉鎖空間への侵入という、一見不可能な作戦にも現実味が感じられます。

閉鎖空間は、超能力者が本来の力を発揮できる場所でもあり、喜緑・古泉チームと橘・周防チームの戦いは、大いに見せ場を作るのではないでしょうか。ハルヒという、いつ爆発するかわからない時限爆弾の脇での戦い、という面白さもありますしね。

で、ここは、ハルヒによる解決という、おそらくは読者の想定外のエンディングが準備されている、と読んでみたのですけど、これはどうでしょうか。

一方、α側のストーリーは、謎の後輩や、SOS団に押しかけた多数の新入生などから考えますと、萌え要素たっぷりの学園ストーリーではなかろうか、と予想されます。

第一の謎は、入浴中のキョンに電話をかけてきた謎の後輩であり、第二の謎は、SOS団入団希望者が1名増えていた点です。

これに関しては、ミヨキチの姉、という大胆な推理をしたのですが、その理由は「分裂」におけるミヨキチへの言及であり、誰だかはわからないが、誰かに似ている、とのキョンの形容なのですね。

似ている、という点は、血縁関係を予想させます。で、後輩、というからには新入生であり、これに該当する人物がいないことから、「分裂」に登場した誰かの姉妹、ということになるのですが、もっとも怪しいのがミヨキチの姉、ということになります。

で、SOS団入団希望者が一人増えるためには、朝比奈着替えのために入団希望者が外に追い出された時点でこの集団に迷い込む必要があり、その場所に居合わせる理由があるのは、キョンを尾行していた人物。そして、キョンに興味を寄せそうなのが、謎の後輩である、というわけです。

また、このような後輩がキョンに接近してくれば、新入生との接点を求める谷口・国木田が介入を図るのもまた必然的な成り行きです。その結果がどうなるかは、推理の範囲を超えますが、たまには彼らにも良い思いをさせても良いのではないでしょうか。

さて、α側のストーリーにも京子らが登場しており、ハルヒに代わる何者かを神のごとき存在と考えております。で、これが佐々木、ということになりますと、β側のストーリーにかぶってしまうのですね。

しかし、一連のハルヒ物を熟読いたしますと、ハルヒに代わりうる、最も可能性の高い人物がキョンであることに思い当たります。つまり、校庭落書き事件の実行犯は、実はキョンだったわけで、長門による世界改造事件の解決を長門に依頼したのもキョンであるわけです。

少なくともこの事実を京子が知れば、キョンこそがハルヒに代わるべき人物である、と考えるのはまったく不自然ではありません。

さて、長門が世界を元に戻す際に、元とまったく同じ世界に戻すのか、といえばそれは疑問であり、朝倉によって異次元化された教室を元に戻した際に、長門はめがねの再構成を忘れているのですね。これと同様の行為を意図的に行うことも、不可能であるとは思えません。

そして、情報統合思念体は、長門に対するバックアップを朝倉、喜緑と準備していることからもわかるように、実に用心深い存在であり、彼らが最も重視する涼宮ハルヒのバックアップを準備することも、また十分に考えられることです。

で、誰をバックアップに起用するかと考えれば、長門の意図を最も伝えやすい人物、すなわちキョン自身か、あるいはキョンにもっとも近くてしっかりした人物(すなわち佐々木)を、バックアップに起用する可能性が高く、おそらくはその双方をバックアップにしたのではないか、というのが私の推理です。

そうなりますと、世界がαとβの二つに分岐した際、京子らのグループがハルヒの代わりであると考える人物は、βが佐々木であれば、αはキョン、となるのもまた必然的な流れです。α側のストーリーで京子らが佐々木に接近したのは、キョンを巻き込むために友人である佐々木を仲間に誘ったのであり、佐々木はハルヒにとってのキョンの役割を与えられていた、と考えることができます。

もちろん、「消失」からも明らかなように、キョンはこの依頼を受けるはずがなく、京子の企てが失敗することは規定事項です。

さて、「分裂」のプロローグの最終部分でのキョンの台詞より、お話の最後の部分でキョンはこれら双方の過去の記憶をもつ必要があり、しかもこれがハルヒの仕業であったことを知っている必要があります。ハルヒがそうする理由は、SOS団の団員募集に対するあい矛盾した思いであることは、「分裂」の記述内容から推察されます。

私の推理に絡んで一つ不明確な点は、長門の世界改変のスタートポイントがいつであったかという点です。これは、ハルヒの落書き後、キョンが「ジョン・スミスをよろしく」とハルヒに伝えるよりは後の時点でなければなりません。

情報爆発が、キョンと長門によって、本来は力をもっていなかった小学生時代のハルヒに力を与えてしまったからである、とする可能性を残すためには、世界改変の開始時点は、4年前の七夕であり、キョンの言葉がハルヒに伝達された直後である、としておくのが良いのではないかと思います。

まあ、これはストーリー展開上の美学、ということになるのですが、4年前の七夕には、可能な限り大きな意味を持たせたいということもあり、また、将来のストーリー展開に含みを持たせるためにも、この可能性は残しておくにしくはない、と考える次第です。

いずれにせよ、ハルヒの特殊パワーの起源が、キョンと長門にあった可能性を示唆しておくことは、「分裂」と「驚愕」をアニメシリーズ3の柱にすることを考えているといたしますと、いかにもありそうなことのように思えます。つまり、シリーズ1がハルヒの登場、シリーズ2が情報爆発の原因の示唆、シリーズ3がハルヒの力の原因の示唆、という構成になるのですね。

以上が、私の推理の背景です。

なお、入団試験の「平凡の原則」による宇宙人が存在しないという証明に関しては、「論理学入門」の196ページをご参照ください。

同書では、宇宙に多数の知的生命体があれば、それらはクラブを形成しているはずであり、地球人がそれに属していないのは平凡でない。故に、平凡の原則から宇宙の他の知的生命体は存在しない、としております。これは「パラドックス」ですから、キョンの解もまた正しい、ともいえるのでしょう。