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波取り記者とマスコミ利権

暇人さんがご紹介くださいましたアゴラのリンクです。なかなか良いことが書かれております。

最近読んでいる新書に、猪熊建夫著「新聞・TVが消える日」という本があります。著者は元新聞記者で、私の議論からいたしますと「アチラ側」の人です。先入観でものをいうのは良くないのですが、内容をみますと、疑問に感じる点が多々あります。

この本の詳細は、また週末にもご紹介することといたしますが、ネットで番組を流すとテレビの視聴率が下がって広告収入に影響を及ぼすだとか、県域免許制を守り抜くことが民放の至上命題であるなどと書かれております。

これらは、テレビ業界、新聞業界の人にとりましては常識なのかもしれませんが、一般の人に対する説得力はまったくありません。もちろん、そういいたい理由は充分にわかるのですが、その理由には正当性の欠片もないのですね。

波取り記者」などという言葉がかつてありましたように、各地の地上波の免許を獲得することはTVキー局を抱えております新聞社にとりまして重要な課題でした。で、政治家に取り入って免許を得ますと、地方の有力者の参加を仰いでローカル局を設立いたします。

この利権の構造は、新聞社(キー局)、政治家、地域の有力者(=集票力)の結びつきがあったわけで、彼らが政治権力を握り、地域社会に影響力を及ぼし、国全体の世論をリードいたしておりますことから、この構造を破ることは非常に難しいという事情があります。

そんな背景がありますので、県域免許制を廃して、ネットで番組を流すなどということは、そうそう簡単に実現しないわけです。

しかし、技術的に何が合理的かを考えますと、ネットで流すというオプションはすでに無視できません。地上波デジタルにしたところで、難視聴対策として、特殊な仕掛け(県域ごとにしか流さない)を施したネットでテレビ放送を流そうとしているのですね。まったく、馬鹿みたいな話ではあります。

まあしかし、自らの利権の構造にこだわりますと、考えることが狭くなってしまいます。ネットも電波も同じであり、インターネット・プロトコル(IP)にはブロードキャストのオプションもあります。放送局にとりましては、送り出した番組が視聴者の元に届けばよいだけの話です。

ならば、電波、IPのどちらを使おうと、同じではありませんか。電波が、電波が、といい続ける精神には、疑問を感ぜずにはおられません。

民放にとりましては、CMを入れて番組を流し、視聴率を測定する際にネット経由の聴取者もカウントすればよいだけの話です。ネットなら、CMを流すと同時にその製品のオンラインショッピングやカタログ請求のためのURLも入れてしまえば良さそうでして、ビジネスチャンスも広がりそうです。

NHKにとりましてはさらにおいしい話がありまして、NHKの放送を受信することができる機器を保有している人は受信料支払いの義務があるのですから、ネット経由で放送いたしますと、視聴者は急増いたします。つまり、PCをもっている人のすべてに受信料支払いの義務が生じるのですね。

NHKには集金の必要さえもありません。インターネット・サービス・プロバイダなりNTTなりに集金させればよいだけの話です。この際には、相当程度(1/10程度にするなど)受信料を割り引いていただかなければ、世間の納得は得られないと思いますが、NHKにはおいしい話だと思います。

かつてのわが国の国民的娯楽でありました映画産業は、テレビの普及とともに衰退の一途をたどりました。その背景には、五社協定という一種のカルテルを結んでテレビを敵視いたしました映画産業の驕りと先見性のなさがありました。

今日のテレビ局や新聞社が、競争排除が可能な許認可制度の堅持になりふりかまわず、技術の進歩に背を向けてネット敵視するという近視眼的戦略に終始いたしますと、かつての映画産業と同じ道をたどる公算が大であるように、私には思われます。

わが国の新聞、テレビが自滅いたしますことは、まっさらな状態でネットメディアの興隆を迎えられるという意味ではプラスであるのかもしれません。しかしその過程で大いなる無駄が発生いたしますこともまた事実です。

わが国にとりましてベストの道は何なのか。関係者各位には、真摯にその問いに応えていかれることを切に望む次第です。


お詫びと訂正。

昨日のこのブログで引用いたしましたコメントはlilasさんが書かれたものであり、akila&lilyさんとしたわたしの記述は誤りでした。ここに謹んでお詫びいたしますとともに、訂正いたします。

なお、本文も訂正済みです。こういうことをいたしますと、その後つきましたコメントの意味がわかりにくくなるという問題があるのですが、このような重大な誤りにつきましては、本文も訂正せざるを得ません。ご迷惑をおかけして、大変に申し訳ありません。