本日は、本年7月15日の出版と、非常に新しい書物であります津堅信之著「京アニ事件」を読むことといたします。
この事件に関しましては、一度軽く触れた程度で、この事件に関して特段の論評などをしていないのですが、これは私にとって興味の対象外というよりは、考え出すと頭が真っ白になって考えることすらできないという問題があるからなのですね。
というわけで、同書に関しても、事件そのものを描写した第1章と第2章は、少々読むのがつらく、ここで論評することも難しい。
そこで、ここでは概略の章建てのみをご紹介し、今ははなき京都アニメーション本社の映像をいくつか、涼宮ハルヒの憂鬱Vol.7(初回限定版)の特典映像からご紹介することといたします。
同書の内容
章立ては次の通りです。
第1章:メディアは事件をいかに報じたか
第2章:事件による被害状況
第3章:「独立国」としての京都アニメーション
第4章:事件があらわしたこと
第5章:事件をいかに記録するか
第一章と第二章が今回の事件の展開、第三章は京都アニメーションの紹介、第四章はアニメファンに対する社会的な偏見など、最後の五章はこの事件をいかに後世に残すかということで、同書の位置づけのような雰囲気の章となっています。
内容は、同書を読んでいただくのが一番ですし、この事件となると心が千々に乱れて文章がなかなか書けないという事情もあり、内容の御紹介はこの程度にしておきます。
京アニ作品「クラナド」と犯人の置かれた状況
ただ、これだけは書いておかなくてはいけないと思う点が、同書が触れていないけれど、今回の事件を大いに連想させる京アニのアニメが「クラナド」だという点です。
クラナドは、父親の起こした事件のため、スポーツの夢を絶たれ、まともに就職もできない主人公(男子)が、同じように各種の傷を抱える少女たちと交流するという、ひたすら暗いお話なのですね。
今回の事件の犯人は、両親が離婚し、父親は自殺、本人が強盗事件などを起こしており、困った状況を招いた責任のかなりの部分は本人にもある点で大いに違いはするのですが、クラナドの主人公と似たようなポジションにあるのですね。
まあ、悩める少女たちとの交流はなかったかもしれませんけど、、、
クラナドの、ちょっと病的なストーリーは、好きな人は好きなのでしょうけど、少々危ない感じを受けたことは確かです。今回の事件とは、関係ないかもしれませんけど。(それに、クラナドでは、事件を起こしたりせず、それなりに幸せをつかむという終わり方でした。)
ありし日の京アニ本社
と、いうわけで、ありし日の京アニ本社の御紹介です。ご案内は涼宮ハルヒ(平野綾)です。
これらの写真をみますと、床も壁も白木の木材で、その内部に大量の紙が置かれている。ここにガソリンをまいて火を付けられては、ひとたまりもないということがよくわかります。
メイキングビデオを撮影しているからという事情はあるにせよ、社員の人たちも良い雰囲気で、こういう場所が失われてしまったことは非常に残念なことというしかありません。
今の私たちにできることは、そういう場所が確かに存在したということを記憶のうちにとどめるだけかもしれません。
あの日
以前この件に関してどこかに書いたような記憶があり、いろいろ探してみました。その結果、BLOGOSの過去のコメントにありましたので、以下再録しておきます。
2019年07月18日 12:30
ここは、ハルヒをつくったところなのだが、、、
AbemaTIMES 「京アニ」で爆発火災、重傷者も
2019年07月18日 20:56
これですか。 http://delitopi.com/kyoto-animation-barisaku/ 何を考えておられるやら、さっぱりわかりません。 それにしてもこのビル、非常階段とか、なかったものなのでしょうか?
BLOGOS編集部 「京都アニメーション」で放火とみられる火災 死者33人に
2019年07月18日 23:10
aninekoさん > このサイズの建物だと、普通の階段が非常階段でもあるから。
よくあるのが、屋外の非常階段なのですが、テレビ画面を見る限り、そういうものはなかったようです。
もう一つは、「オリロー」などと呼ばれる、非常用のはしごで、これは窓の近くに設置しておいて、非常時に外に投げ出して使う非常梯子なのですね。 私は化学会社に勤務していたことがあり、危ないものを扱うだけに、逃げ出す準備はいつでもしておりました。
アニメ会社も、セルや紙を大いに扱っており、燃え出せばひとたまりもなさそうです。逃げる準備だけは、怠りなくすべきだったのではないでしょうか。
ハルヒの初回限定盤はほとんど全部持っているのですが、中に、京アニ訪問のおまけDVDがありました。 今この時に、見てみたい気もするのですが、とても見られる心境にありません。
記憶をたどれば、このスタジオ、木目も美しい白木の壁でした。ねこさんもいたのですが、どうなってしまったのでしょう。 もはや涙しかありません。
BLOGOS編集部 「京都アニメーション」で放火とみられる火災 死者33人に
2019年07月18日 23:27
aninekoさん > 京アニはもうセルロイド使ってない。
基本はデジタル描画なのでしょうけど、動きを見るとき、印刷したものを重ねて上の紙をパラパラめくってみているのですね。
まあ、職人というのはどうしようもない奴で、コンピュータで見たほうが分かりやすいといっても、紙をぺらぺらしないと気が済まない、ということじゃないでしょうか。
もちろん、セルロイドなどという危ないものではないと思いますけど(セルロイド:ニトロセルロースと樟脳の混合物)、PETフィルムか普通の紙くらいは使っていると思いますよ。 こういう現実は、ばかにしてはいけません。昔風のやり方の中に、素晴らしいクリエーションがあるのですから。
BLOGOS編集部 「京都アニメーション」で放火とみられる火災 死者33人に
犯人に言いたいこと
それにしても、この犯人にこの絵を描いたのが誰か、ちょっとだけでも良いから考えてもらいたいものです。こちらをクリックしていただきたい。
あんたが殺したひとたちだ、ということですね。
傷を負っている人はあなただけではない。多くの人がそれぞれに傷を負っている。でも、それぞれに、必死に生きているのですよ。
それを誰かのせいにして、傷つけてはいけない。
己の人生を必死に生きる、その過程の中に、自らの幸せも、また、ある。それに気づかなくてはいけません。
2024.1.25追記:この事件に関して本日犯人に死刑判決が下されております。まあ、死刑は当然という気も致しますが、死刑にしたところで、死んだ人たちは戻ってこない。本件に関しては、もう少しやりようがあったのではないかと思います。
上のスナップショットを見ればわかるように、この建物は、火災に対して非常に脆弱な構造となっております。内部に大量の可燃物、それも燃えやすい紙が大量に積まれており、建物の構造も、中央部に特にドアなどで区切られることもない形でらせん階段が設けられているのですね。
この構造では、火が付けられたらひとたまりもないと、事件発生当時も思ったのですが、火災の原因は放火以外にだっていろいろある。電気器具が異常をきたすなどということは、しょっちゅうあるのですね。私の勤務していた会社でも、基板に使っていたタンタルコンデンサが突然火を噴いたこともありタンタルコンデンサは使用禁止などという事件もありましたし、コピー機に溜まった粉末状の紙ごみが発火したこともある。あるいは、電気のソケットに埃がたまって発火したという例も報告されておりました。
つまり、放火されなくても火災になる危険はある。その場合にも、中にいる人たちは安全に逃げられなくてはいけない。そういう意味では、中央の階段以外にも、非常脱出口を設けておくべきだったし、らせん階段と作業場所の間は、防火壁で仕切るべきだったのではないかと思います。
今回の事件は犯人が悪いことは言うまでもないけれど、犯人を罰したらそれでよいというものでもない。頭のおかしな人間は、この人以外にも多数存在しているはずだし、放火以外の火災原因だってある。そうした場合にクリエータの安全を図ること。これは、アニメスタジオに限らず、人を使って何かをする以上、当然のごとく考えなくてはいけないことだったのではないかと思います。
おそろしい事件だ。
ガソリンとはこうも恐ろしく、犯人の思い込み、だだの勘違いで多くの人の人生を狂わせてしまった。