このエントリーは、杉山大志氏の5/15付けアゴラ記事「米国民は温暖化対策より石油増産を望んでいる」に触発されたものですが、ブログ限定で書くことといたします。
米国世論調査結果
少し前の「どうする、エネルギー」と題する本ブログエントリーで、ロシアのウクライナ侵攻により高まる原油・天然ガス問題を解決する一つの鍵は、米国がこれらを増産することだと書きましたが、米国民もこれに気付いたようです。
杉山氏のアゴラエントリーが紹介している記事は、5/9付けのRASMUSSEN REPORTS「気候変動よりもガス価格を心配している有権者」です。元記事は英語ですが、読者の便を図るため、すべてGoogle翻訳により日本語としたものでご紹介いたします。
まず、米国の有権者の多くは、エネルギー価格の上昇を「非常に懸念」しており、その割合を以下のように紹介しています。
米国の有権者の82%がエネルギーとガソリンの価格の上昇を懸念しており、そのうち60%が非常に懸念しています。エネルギー価格の上昇を心配していないのはわずか14%です。......
60%は、米国での石油およびガスの掘削を劇的に増加させる法律を支持しており、その中には、そのような法律を強く支持する47%が含まれています。30%は掘削を増やす法律に反対し、11%は確信が持てません。
原文は以下の通りです。
A new national telephone and online survey by Rasmussen Reports and the Heartland Institute finds that 82% of Likely U.S. Voters are concerned about rising energy and gasoline prices, including 60% who are Very Concerned. Only 14% aren’t concerned about the rising price of energy. ......
Sixty percent (60%) favor a law that would dramatically increase oil and gas drilling in the United States, including 47% who would Strongly Favor such a law. Thirty percent (30%) would oppose a law to increase drilling, while 11% are not sure.
エネルギー供給の増加は、一方で炭酸ガス排出量を増加させ、温暖化を加速するため、資源問題と環境問題は一方を重視すれば他方が軽視される「トレードオフ」の関係にあるのですが、いずれを重視するかということに関しての質問に対しては、次の結果を得ております。
調査によると、有権者の50%は、気候変動が今後100年以内に人間、植物、動物に壊滅的な影響を与える可能性が高いと考えています。そのうち30%は、気候変動が1世紀以内に壊滅的な影響を与える可能性が高いと考えています。42%は、気候変動が100年以内に壊滅的である可能性が高いとは考えていません。24%は、そのような大惨事はまったくありそうもないと述べています。
バーネット氏は声明のなかで、「30年間の宣伝にもかかわらず、調査対象者のわずか50%が、気候変動が今後100年間で人間や環境に真の脅威をもたらすと考えている」と述べた。「対照的に、アメリカ人の大多数は、気候変動に関係なく、石油とガスの生産を拡大する政府の政策を支持しています。」
原文は次の通りです。
The survey finds that 50% of voters believe it’s likely that climate change will be catastrophic for humans, plants and animals within the next 100 years, including 30% who think it is Very Likely climate change will have a catastrophic impact within a century. Forty-two percent (42%) don’t believe climate change is likely to be catastrophic within 100 years, including 24% who say such a catastrophe is Not At All Likely.
“Despite three decades of propagandizing, just 50 percent of those surveyed believe climate change poses a real threat to humans or the environment over the next 100 years,” Burnett said in a statement. “By contrast, a strong majority of Americans support government policies that would expand oil and gas production, regardless of climate change.”
と、いうわけで、たしかに、温暖化を懸念する人は有権者の50%を占めるのですが、それ以上に、エネルギー価格の高騰の方が大きな問題であると考えている、というのがこの調査結果の結論です。
この世論調査には、共和党支持者であるか民主党支持者であるかによる違いや、男性女性による差など、いろいろと興味深いデータも含まれているのですが、全体的動きとして、気象変動よりもエネルギー価格という方向が示されている点が、最も重視すべきところでしょう。
今後どちらに向かうべきか
この調査結果に、核融合の実現化時期が早まりそうだという、最近のニュースがどの程度影響を与えているかはわかりません。少なくとも、この記事には、核融合には一切触れられておらず、この調査結果に及ぼす核融合が早期実用化しそうだという最近のニュースは、さほど影響を与えていないように思われます。
温暖化対策の大筋は、2030年には我が国の炭酸ガス排出量を半減し、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを目標としております。
本ブログエントリー「核融合のインパクト」では、核融合発電が2030年代にも実用化されそうだということをご紹介しましたが、2020年代中に実証試験が始まるということで、核融合開発の目標を2030年に化石エネルギー資源の半分を核融合に置き換えることとすれば、炭酸ガス排出量削減目標はさほどの無理もなく達成されることになります。
その時生じる副作用として、化石エネルギー資源の需要が半減するということで、炭酸ガス排出を半分にするのだからこれは当然なのですが、エネルギー資源の売り上げが落ちてしまう。これら資源を温存することは意味がなく、早期に採掘することが利益にかなうことになります。
これは、米国有権者の示した選択、気候変動対策よりもエネルギー資源の確保という世論とも整合しております。核融合の可能性を米国政府が認めるようになりますと、米国政府も資源温存から価格高騰阻止に政策を切り替えるのではないでしょうか。
エネルギー問題、どうやら良い方向に進みそうで、まず一安心といったところです。
エネルギー増産への日本の支援
見落としておりましたが、杉本大志氏の「世界の開発途上国は石炭増産へ:日本は支援すべきだ」が5/14付けのアゴラ記事として公開されております。同氏はこの中で、エネルギー価格向上のため開発途上国が石炭生産能力を高めており、これに我が国も資金援助すべきと主張しております。これは全く正しい主張で、石炭以外に天然ガスの液化設備などへも大いに資金援助すべきです。
核融合の実用化が近いと言いましても、メインシナリオは10年ほど先の話であり、通常石炭増産や天然ガス液化設備などに対する投資は5~10年で元が取れるはずで、現時点での投資は十分にペイするはずです。さらには、核融合が実用化された時代でも、炭素資源はやはり必要で、石炭は魅力的な資源となります。石炭産出国と良好な関係を持つことは、我が国にも有意義な政策であるといえるでしょう。
アゴラのGEPRという区分は、およそ原子力発電のPR記事のようなものが多く、あまりまともに読んではいなかったのですが、この記事に関してはまとももまとも。たまにまともな記事が混ざっているところが困ったものでもあります。
ともかくロシアは戦争やめれ