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紅茶の誘惑

一年半ほど前のブログに以下のような記事を載せたのですが、最近思うことがありまして再録したいと思います。

ペットボトルの飲料が最近オオハヤリです。これからの暑い季節、ますます手が離せなくなりますね。私は最近緑茶を飲むことが多いのですが、以前は、午後の紅茶のレモンティーひと筋、ま、私の一押し銘柄であったわけです。(以下「午後の紅茶」を「午後ティー」と表記)

ところが何年前かのある日、午後ティーの味が変わっていることに気づきました。なんか、紅茶の味が薄くなってしまったんですね。で、さては、、、と。

これ、私がそう思っただけで、実際のところ何が起こっていたかは定かではありません。以下の記述は、私の感覚と憶測にのみ基づくものであって、事実であるかどうかの保証は全くないことにご注意してお読みください。

なるほど、経営学的に考察すれば、紅茶飲料ビジネスにおいて利益を追求するなら、原価の低減が一つの策、わからない程度に水で薄めて売れば、儲けが大きくなる。その頃、午後ティーの宣伝が目立ち始めましたので、あるいは原料費を浮かせて、広告予算に回したのかもしれません。でも、こういう作戦、いつかは行き詰るのですね。

ほんの少し薄めたって誰も気が付かない。ならばもう少し薄めてやろうと考える。実際、消費者が味の変化に気づくまでは、薄めるのが正しい作戦です。だって、同じ消費者満足を与える製品が安く出来るわけですからね。

しかし、水増しがある一線を越えると、消費者が味の変化に気づく。紅茶飲料、午後ティーだけじゃない、だから、別の銘柄を試すようになります。で、そちらが美味しければ、今度は、午後ティーなんか飲まなくなる。

実のところ、中身を薄めて得られるコストの低下、それほど大きいとは思えません。ペットボトルの中身、全部水にしたところで、さほど安くなるわけはないでしょう。現にペットボトル入りの水が、結構な値段で販売されていますからね。紅茶飲料のコスト、多分、容器や流通の手間、安全管理の部分が大きいのでしょう。コレに比べれば、紅茶の葉っぱの値段など吹けば飛ぶようなものでしょう。だから、薄めたことが裏目に出て売れ行きが低下すれば、おそらく損失の方が多いはず。

紅茶飲料メーカの経営、王道は、美味しい紅茶を提供すること、そうすれば、売り上げが増えて、管理の手間賃が薄まる、紅茶の葉っぱの値段など、この利益に比べれば微々たる物でしょう。

ちなみに、私の紅茶飲料の遍歴、リプトンの紙パックから、トワイニングの缶へとシフト。まだどれも、コレは、という味に出会ってはおりません。

紅茶は本来もっと美味しいはず。それをきちんと造れば、ヒット商品になるかもしれません。

飲料メーカの目の前には、大きなビジネスチャンスが広がっているのですね。

お茶系飲料のマーケティングに関しては、研究レポート(リンク切れです)がありまして、キリンの午後ティーは伊藤園の「お~いお茶(おい茶)」とともに、マーケット創造型の、キリン主力商品でした。で、キリンは「生茶」によりおい茶のマーケットに果敢に切り込み、この作戦は成功しました。

ところがこの春の、生茶リニューアルは裏目に出た様子で、キリンビバレージのシェアは低下。私も生茶を愛用してたのですが、リニューアルとともに濃い茶(おい茶の「濃い味」)に切り替えました。なにしろ、生茶、どう見ても薄くなりました。「こいつら、またやったね」と思いましたね。

最近、愛用のトワイニング(JT)が品切れで、午後ティーを飲む機会がありましたが、やはり薄い。で、何が驚いたかって、しっかり缶に書いてある。「純水午後ティー」と。居直り、ですね。

しかし、これは良い作戦かもしれない。キリンビバレージ、「純水シリーズ」を売り出せばよい。「純水生茶」なんて、もう最高、、、って、これ皮肉ですからね。

冗談はさておき、お茶系飲料に味を求める人が多いことは想像に難くありません。そんな市場でお茶っ葉を節約して味を落とせばシェアを失うことも目に見えているのですね。なのになぜだろうか、と考えて、一つの仮説に思い至りました。これは戦略性の欠如ではないか、と。

企業の経営、利潤を追求しなくちゃいけませんから、売上を増やし、コストを下げる努力をします。で、戦略性に欠けた会社、無能な経営者は、コストの一律カットを従業員に要求するのですね。

たとえば、会社の全部門に、コストを一律5%カットしなさい、と号令を発する。こんなことなら、どれほど無能な経営者にも可能なのですね。でも、そういう命令にほいほいと応えられるのはたるんだ部門。これまで大いに無駄使いをしていた部署なら、トップの要求に簡単に応じられる。でも、ぎりぎりの効率を追求していたところにそんな命令が下ると、これは無理が生じます。で、「これは水増しするしか仕方ありませんね」なんてことになったのではないでしょうか?

さらに想像を逞しゅうすると、この「純水」、商品開発部門の反骨精神のなせるわざ、かも、、、傍からみても皮肉交じりのこのネーミング、トップへのメッセージ、だったのかも知れません。でもそれが外に出てしまった、ということは、このメッセージ、ぜんぜん伝わらなかった。

ウチの社長は鈍感なんだから」などと、キリンビールを傾けながらぼやく男がいたら、その人は純水午後ティーの名付け親、かも、、、って、この話、全部私の妄想、ですからね。